あいさつ

   学校長:藤岡 換太郎

    顧問:平野 直人

 実行委員長:右京 なな

副実行委員長:鈴木 聡志

海洋と地球の学校 学校長

神奈川大学工学部非常勤講師

放送大学非常勤講師 ほか

 

藤岡換太郎

 

 2011年3月11日に未曽有の地震と原発のメルトダウンが起こりました。地震学者や地球科学者、工学系や生態系の研究者は茫然自失の状態に陥ってしまいました。一体どうしてこのような災害が起こるのか、どうしてこのようなことを予測できなかったのか、100年に亘る地震の研究とは一体何であったのかと深く反省をしているのが現状です。同時に原子力発電の恐ろしさとその処理、来たるべき災害の来襲など未知の問題を多々抱えています。しかし、過去の地球にはもっと恐ろしい壊滅的なさまざまな出来事が起こったことがわかっています。今人類は環境や災害の科学に向き合っていかねばなりません。このような時にこそ原点に立ち戻って基礎科学をしっかり学ばねばなりません。

 

 そのような折に学生が主導する学校、「海洋と地球の学校」が仙台で開催される運びとなりました。しかも震災で大きなダメージをこうむった宮城や山形などの東北の大学の学生が核になっています。

 

 この学校の目的は、地球に関するさまざまな分野の講義や野外巡検で学生と講師、学生同士の議論を通して地球を正しく理解してゆく方向をめざすものです。この学校を通して自然に触れ、自然を考えることを基本に据えています。

 

 地球を正しく理解するには多くの学問が必要です。現在の地球を知ることもさることながら過去の地球や宇宙の姿を知ることは未来の地球の姿を考えるうえで不可欠です。地球システム科学や固体地球科学、大気や海洋の科学、生物・微生物の科学、さらに文学や医学など多くの分野の融合が必要です。個々の学問の深い探求もさることながら、学問の垣根を取り払った広い世界を体験し理解することが大事です。さらに、野外巡検を通して大地(地球)そのものに触れ、観察したりすることも重要だと考えています。この学校の特色はここにあります。

 

「災害を 乗り越え海に 陽が昇る」

 

東日本大震災を乗り越えて明日を目指していきたいというのがこの学校のもう一つの目的です。「ともだち」作戦に似て東北以外の共に学ぶ友達を全国から探していきたいと考えています。多くの学生諸君の参加をお待ちしています。

 

平成26年6月吉日

海洋と地球の学校 顧問

東北大学理学部准教授

 

平野直人

 

 

 大学生や大学院生の皆さんは、現在ご自身の所属する研究室の研究分野や、それに伴う技術を学んでいる最中だと思います。これらを学ぶことで独自のスキルを身につけ、将来社会に羽ばたくことと思います。一方、そこから更に異分野の知識や、研究の最新動向を知ることは、自分の研究やスキルを活かしていくために必要な視野が広がるチャンスとなります。少なくとも理系の研究では特に、ある事象を解明するために様々な研究分野同士でタッグを組むという流れが最近のトレンドとなり、大学や研究機関の枠を超え、それによって大きな研究成果が数多く生まれています。

 

 この学校はそんな皆さんの視野や横のつながりを広げ、さらなる研究活動の幅を広げるために行います。この学校で異分野の人たちや外部の人たちと積極的に交流し、ぜひご自身の視野を広げてください。ひとりでも多く人とのつながりと、ひとりひとり異なる観点を皆さんで感じていただければと思います。

 

平成26年5月吉日

海洋と地球の学校 実行委員長

東北大学理学部4年

 

右京なな

 

 

 地球科学に関する若手会は多く存在しますが、専門分野に関係なく学部学生から大学院生までが参加できる勉強会は数少ないのが現状です。地球表層から内部までのプロセスを真に理解するためには、地質学的時間スケールの中で地形・地質・地球物理観測・生物など地球の変動や性質をとらえるための学問分野を幅広く学ぶことが不可欠であると思います。そこで学会や既存の若手会と異なり、学部学生から大学院生までが地球科学を包括的・総合的に学ぶことができ、新たな事を学ぶだけでなく、自分の知識とは異なる考え方や研究のアプローチを知る若手中心の会、「海洋と地球の学校」を作ることにしました。基礎的な内容から最先端の研究までを網羅し、常に地球科学の本質を参加される皆さんへ問いかけることが本学校の特徴です。参加者が地学の本質を理解し自身の研究に新たな方向性を見出すような学校になれば幸いです。ですが、実行委員会は皆さんに学びと議論の場を提供するだけです。皆さんが講義と巡検を通じて考え、議論することで本学校ははじめて完成します。学部学生から社会人の方まで、異分野コミュニケーションを通じて視野を広げようではありませんか。そして本学校で学んだことを研究に活かし、地球科学の普及活動として社会に還元していきましょう。

 

 最後になりますが、本学校を開催するにあたり支援して頂いた多くの方に心から感謝申し上げます。

 本学校が、これからの地球科学と社会に貢献できる勉強会になれれば幸いです。

 

ともに考え、議論しましょう

―われわれはどこから来たのか われわれは何者か

われわれはどこへ行くのか―

海洋と地球の学校実行委員会 実行委員長 右京なな

 

 

海洋と地球の学校 副実行委員長

東北大学医学部6年

 

鈴木聡志

 

 

 2016年は、画期的ベストセラーとなった小学館の学習図鑑シリーズの初版発行から50周年にあたります。かつて描写された未来は、情報化と無尽蔵のエネルギーがもたらす豊かで平和な社会でした。その世界は戦後まもなくの幻想だったかもしれませんが、私は小さい頃なぜ古い図鑑に載っている世界は私にとっての過去になっているはずなのに実現していないのか不思議で仕方がありませんでした。

 日本に限らず多くの国で政治、社会に始まり科学技術に至るまで理想は否定され、現実主義が台頭しています。しかし、理想を追うのがなぜいけないことなのでしょうか。私達が求める世界はもっと素晴らしい世界であったはずで、それに向かって努力することはできるはずです。

 私達の求める素晴らしい社会の実現のために学生として教育を受けた私達ができることは、人類にとって新しい知識・思考・技術をもたらすことです。新しい知識や技術は常に新しい分野の発掘と軌を一にします。軍医だったダーウィンが博物学から生物学を拓いたように、地球科学や生物学、機械工学、医学、社会学が一つにまとまった時、人類の新しい地平を切り開く端緒が得られるはずです。

 私達が開催する海洋と地球の学校は、様々な分野の学生が科学と社会の未来について熱く論じ学ぶ非常に珍しい学校です。日本中から集まった若い学生が未来を作るために、講師や社会人とともに地球科学の切り口から自然科学に迫ります。ここで得た経験は必ずや確かな経験となり、社会の発展のために貢献できる人材を育てる一助になるはずです。

 この海洋と地球の学校が、輝かしい未来を築くためのきっかけとなることを信じて、大いに学び、議論する場を準備したいと思います。